カット割りの基本ルール その1
ドラマなどを見てもらえば分かると思いますが、映像では何が何でも引き画長回しで通そうということは少なく、それはそれで意味が出てしまうからなんですけども、ある映像を違う映像につなげていくということ自体はモンタージュ・編集・カット割りなどと呼ばれています。映画も出来てから100年以上経っていますのでそれなりの実験やら発明やらがありまして、こうするとこうなるというようなザックリとしたルールは蓄積されてきています。
そういったルールの中で比較的分かりやすいものをいくつか紹介します。
動きでつなぐ場合は後のショットの方を大きく
映っている人物の動くタイミングで別のショットに動きでつなぐ時は、後のショットの動きの方を大きく鋭くした方がつながりが気になりにくいという法則があります。基本的に上手いカット割りとは、カットが割られたことに違和感を感じない、もっと言ってしまえば気付かないようなつなぎ方をさします。これは逆に張れば違和感が出るカット割りに出来る、ということでもあります。法則は順張りするだけではなく逆張りしてなんらかの効果を狙うことも出来ます。
が、プロにおいても逆張りはすべってしまうことの方が多いです。特に、もし他の部分で拙いところが多く見受けられた場合にはミスしてるようにしか見えないので、よっぽどのことが無い限りは順当につないでいきましょう。
一度アップにいってしまうとなかなか引きにくい
顔の寄りは表情が読み取りやすく被写体に心情的な同調をしやすいショットになります。一度そこまで寄ってしまってから何の意味もなく引きになると気が削がれてしまうというか、言ってみればそこに意味が生まれてしまうので、同じ流れの中で意味もなく寄りから引きに戻るというのはしにくくなります。
「意味が生まれてしまう」というのがポイントです。カットとカットの間には意味が生まれてしまうことがあります。それがシーンテーマや演出意図と全くマッチしていなかったりすると、観ている人にすべっている印象を与えてしまいます。
同じ方向を向くようにする(イマジナリーライン)
人物が急に逆向きになると違和感が生まれてしまうので、基本的には同じシーンでカットを割る時は同じ方向を向いているように調整します。このルールを簡単に守るための方法として「イマジナリーラインを越えない」というやり方が推奨されています。
イマジナリーラインに関しても、しれっと逆に回ってしまうとギョッとしてしまい、意味が出てしまいます。そして回り方が下手だとミスにしか見えません。
どうしても逆方向にさせたい場合はカットを割ってラインを越えるのではなくて、人物自体に移動してもらってカメラの逆に回らせてください。もしくはサイズを工夫するかですね。この場合はセットの造形いかんで気にならないで越えられる場合があります。ともかく基本的にはカットが割られたということが気になってしまう場合は悪いカット割りだったと言えるでしょう。
カット編集によって意味が生まれるということ
「カットとカットの間に意味が生まれるってなんだよ」と思われるかもしれないので分かりやすい例を。表題に出した画像ですが、
木の陰からのぞき込んでいるふたりの男の背中(カット3)とそのふたりの表情(カット4)というつなぎです。カット3ではふたりは奥にいる人物たちを見ています。ですがカット4の撮影時、この表情側のふたりは奥にいる人物を見ていません。このショット単独では、木から覗き込んでいるふたりの男というだけです。
カット3の後にカット4を連続でつなげたことで、このふたりの人物が奥にいる人物を覗き見ているという意味が生まれています。こういう、カットをつなぐことによって意味が生まれることをモンタージュと呼びます。ただモンタージュという単語自体に色んな意味が加わっていって、もっと広く編集ということをさした言葉となってきているので、ここではそういった単語があるということだけ覚えておいてください。
今回はカット割りの基本ルールを、カット割りによって意味が生まれるということを中心に紹介していきました。他にも法則とは呼びにくいような地味なルールもありますので、いずれ機会があれば紹介していこうと思います。
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1件の返信
[…] それはそれとしてその1に引き続きカット割りのルールについて。まずは話の流れにスムーズに乗る形で演劇から流用してきた慣習の話からしていきましょう。 […]